ふたり輝くとき
「いい加減、諦めなよ」

ユベールが最後の1人を吹き飛ばす。余裕があるように振舞ってはいるけれど、汗だくで荒い息をするユベールは苦しそうに見えた。

そして、サラはユベールの密閉の呪文も弱くなってきているのを感じていた。

男たちもかなり傷ついてつらそうだけれど、それでも彼らにはまだ戦える力が十分に残っているように見える。

「そうですね……もう、よろしいでしょう」

ゾクリとする笑みと共に、1人の男が1歩前に出てユベールはまた剣を構えた。

「やれ」

男が静かにそう言って、全員が持っていた剣をユベールに――否、ユベールの背後のサラへと――放った。

ユベールは舌打ちをして素早く動いたけれど、八方から飛んでくる剣をすべて弾くことはできず、その半分がサラを守る壁に突き刺さった。

「ぐっ、う……っ」

壁が粉々に割れ、ユベールが地面に膝をつく。

防御の呪文が破られたときのダメージはかなり大きいものだ。空気を限界まで入れた風船が割れるように……

「ユベール様っ」

呪文から解放されたサラはユベールに駆け寄った。ユベールの身体を抱き締めて呪文を唱えようと息を吸うと、ユベールはサラの手をギュッと握り締めた。
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