ふたり輝くとき
「サラっ、呪文は使っちゃダメ」
「どうしてですか!?こんな――」
「サラ!君は自分の身体が今どんな状態なのかわからないの!?」

ユベールは苛立ったように声を荒げる。だが、身体は痺れているようでサラに寄りかかったまま。

サラはグッと言葉を飲み込んだ。

おかしいことくらい、わかっている。呪文をうまく使えるかもわからないし、呪文を使ったらきっと気が漏れている症状は悪化する。

けれど、ならばどうやってこの状況を抜け出せばいいというのだろう。

「それでは、ユベール様とサラ様をお連れしましょうか」

リーダー格の男の言葉で、他の男たちがサラたちに近づいてくる。

「やめてっ!」

そう叫ぶと、パンッと音を立てて男たちの足元で光が弾けた。その瞬間、サラは眩暈を覚えた。

身体の内側に電流が走るようにピリピリとした痛みが駆け巡り、頭が殴られたように意識が攫われそうになる。身体がどんどん熱を帯びていく。

サラの放った光に、彼らは一瞬足を止めたものの、そのまま歩を進めてくる。

「サラ!」

倒れそうになるサラの身体を、少しだけ回復したらしいユベールが支えてくれた。しかし、呪文を使うほどには身体が戻っていないらしく、男たちを睨みつけるだけ。

彼らがサラとユベールにあと数歩と近づいて、サラはユベールにしがみついて目を瞑った。
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