ふたり輝くとき
翌日。

ユベールはサラの身体を丁寧に拭いて着替えさせ、自分も洞窟の奥にあった湖で身体を清めてクリスティーナから受け取った服を纏った。

サラのドレスはルミエールで用意するものよりもシンプルで、だが、淡いグリーンの上品なデザインのそれはサラにとても似合っているように思えた。飾りも最低限に抑えてある。アンナやアドリーヌに言わせれば“地味”なドレスなのだろうけれど。

ユベールの服はおそらくクリスティーナの兄――マーレ王国の王子――のものだろう。こちらもルミエールの物よりスッキリしたデザインで動きやすそうだ。

軽く食事も済ませ、サラには解熱剤も飲ませたけれど、苦しそうに目を閉じたままのサラにユベールは顔を歪めた。

昨日よりまた、サラから漏れる気は多くなった。このままでは……

「サラ、ねぇ、僕を置いて死んだりしないよね?」

ユベールはサラの身体を起こして抱きしめた。座ったまま横抱きにしてサラの頭を抱えて胸に押し付ける。

壊れないで欲しいと願った唯一の存在が、壊れようとしていて……ユベールは初めて“寂しい”という感情に支配された。

そんな不安を消すように、力を込めてサラを腕の中に閉じ込めた。目を閉じて彼女の熱い体温を、息遣いを感じれば少しだけそれが薄れる。

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