ふたり輝くとき
ドン、と――

鈍い音がして太ももに触れていた気持ち悪い感触が消えた。部屋には悲鳴が響き、風が吹き荒れる。サラが目をあけるとユベールに抱きかかえられていた。

ユベールはそっとサラを床に降ろし、縄を解いて涙を唇で拭ってくれた。

「ユベール様っ」
「ふふっ、ちゃんと僕の名前を呼んだんだ……いい子だね、サラ」

ユベールは嬉しそうにサラの頭を撫でて、スッと立ち上がる。

「もう少し、いい子にしててね?」

そう言って、ゆっくりと吹き飛んだダミアンやロラン、アンナ、ジャンの方へと歩いていく。

「ユベール……っ、なぜ!?」

ロランが少し咳き込んで、ふらりと立ち上がった。ユベールは少し距離を置いたまま立ち止まり、静かに口を開く。

「光が使えないなら、風を使うまでだ。ちょっと時間はかかったけど、うまく気も練れたしね」

どうやらユベールにつけられていた手錠はユベールの力を制限するものだったらしい。サラは粉々に割れたそれらに視線を向け、またユベールの背中へと戻した。

「母上、僕は今、貴女に初めて感謝したよ」

表情は見えないけれど、ユベールはきっと笑っているだろう。その声が、とても冷たいものだから。
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