ふたり輝くとき

光のあるところに

剣が交わる音に、呪文を唱える声、悲鳴、呻き声。

紅く咲き乱れる花々に床や壁は塗り替えられ、その上をシャンデリアや装飾品の破片が泳ぐように散らばっている。

人々は皆、1つの台風の目を中心に吹き荒れて飛ばされる。

ユベールは躊躇することなく剣を振るい、投げ、光を爆発させていく。時折サラへの攻撃を仕掛ける者を退けるために近くへ来るけれど、彼がサラの顔を見ることは1度もなくて。

「ユベール様……ユベール様!もうやめて!」

サラは溢れる涙を拭って、声が枯れるほどに叫ぶけれどそれが届くことはない。

「サラっ、サラ!」

ドン、と外から光の壁が叩かれて振り向くとジャンが頭から血を流し、息を荒げてサラに縋り付くように壁を掻き毟るような仕草をした。

サラは怖くなって、ジャンとは反対側の壁に背中をつけて距離をとった。

「サラ、助けてくれっ!ユベール様を止めるんだ!お前しか、できない!」
「っ、お……」

“お父様”と……呼びかけて口を噤む。

ジャンが、父親だったことがあっただろうか?

そんなことがサラの頭をよぎった。この状況に嫌な音を立てていた心臓が、急に冷静なビートを刻み始める。
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