ふたり輝くとき
「サラ!さぁ、早く……俺を助けろ」

光の壁がジャンの手についていた血で汚れていく。それは、サラの心に染みを作るように――

サラはぎこちなく首を横に振った。

助ける、理由は?

そもそも、目の前の男は誰なのだろう?

「サラ!お前はっ!俺はお前の父親だぞ!お前は母親の望みも、父親の望みも、何も聞けないというのか!?何のためにお前に力を与えたと思っている!!」

ジャンはサラの答えに発狂して剣で壁を叩き始めた。

「や、やめてっ」

サラは震えながらそれを見つめる。後ろへ下がろうにも、光の壁の中ではこれ以上距離がとれない。

「シュゼットがお前を生かしたいと、自ら犠牲になったというのに!お前は呪文さえ使えない、泣くばかりのうるさい赤ん坊だった!それを俺が生かしてやった!呪文を使えるようにしてやった!」

目を血走らせて叫ぶジャン。

サラはその口から零れていく自分勝手な言葉を聞きながら、心の奥底から這い上がってくる冷たい空気を感じていた。
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