ふたり輝くとき

勝者(セイギ)の記録

ルミエール城でユベールが暴れた翌日。

城下町のクラドールが1人残らず招集され、負傷者の手当てが行われた。蚊帳の外だった使用人たちは謁見の間の後片付けや、彼らの看病に勤しんでいる。

ダミアンやアンナ、ロランはとりあえず意識があってトラッタメントを施されて順調に回復しているが、重症だったため1週間ほど安静にしなければならないだろう。

ジャンは……相当ユベールの怒りを買ったらしく、助かったのが不思議なくらいの危ない状態だ。こん睡状態が続いている。当のユベールはそんなことは1ミリも気にならないようだけれど。

そんな中、クロヴィスはユベールの部屋にいた。

「サラ、また熱がある……」
「ん……少し、だけです」

そんなやりとりをする2人をチラリと見て、クロヴィスはこっそりため息をついた。昨日の暴れようは何だったのだ、というくらい穏やかなユベールはサラを片時も離そうとしない。

今も、クロヴィスがいるというのにソファに座ってサラを膝の上に乗せて横抱きにし、優しく肩を撫でているのだ。

サラも昨日のことや体調が悪いこともあって甘えるようにユベールの胸に頬を擦り付けていて。

『ねぇ、僕……この部屋にいないはずなのに熱いんだけど』

クロヴィスと同じようにため息混じりに言う“ユベール”は、しかし、この状況を面白がっているようでもある。

「ユベール様、お話をさせていただきますが……よろしいですか?」
『うん。って、それってどっちに言ってる?』
「どちらも、でございます!」

クロヴィスはだんだんとイラついてきて、少し声を荒げた。
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