ふたり輝くとき
その沈黙を破ったのはユベールだった。

「君の感傷はどうでもいいけどさ。サラや僕のために行動することは、歴史をいじることにはならないわけ?」

ユベールの“破壊”を止めたことは、歴史を変えることになるのではないだろうか。あのままだったら、確実にルミエール城は崩壊していた。

『僕は過去の人間だから、いいんじゃないの?』
「は?」

ユベールは思わず眉を顰めた。

『タイムパラドックスって知ってる?未来から過去へ行った人間が自分の親や先祖を殺すと自分が生まれる可能性を消すことになって、そもそも過去に行って親を殺すってことが不可能になるとか、そういうの。でも、それって未来の人が過去を変えたら歪んじゃうってことでしょ?』

つまり、ユベール国王は過去を変えるのではなく、未来を変えているからいいということなのだろうか。

ユベールの生きるこの瞬間を過去と見なすのは、未来の自分や自分の子孫だ。彼らには今起こったことが歴史として語り継がれる。

ユベール国王から見ればユベールの生きる世界は未来であり、未来はどうなるのかわからないものだから“変わったかどうか”も曖昧になる……?

「わけわかんない」

頭の中での時間軸がおかしくなって、ユベールはこめかみを押さえた。

『うん。僕もよくわからないからいいよ』

適当なユベール国王に、頭痛までしてきそうだ。

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