ふたり輝くとき
「これ以上このくだらない舞台に付き合う理由もないし、恐怖政治をするつもりもない。そこにいる、誰よりも王位を欲しがっている罪人王子を許して王に据えるも、後宮から王女を引っ張り出してきて女王に据えるも、勝手にやってよ」

ユベールはそう言って、王座の段差をゆっくりと降りた。サラもユベールに手を引かれてついてくる。

「いいよね?サラ」
「はい」

小さくサラに問うと、サラはすべてを理解したようで笑顔を向けてくれた。

「そういうことで、王子ごっこも今日で終わりだ。僕はこの城を出て行く」

ハッキリと、皆に聴こえるように宣言してユベールは歩き出した。

「ユベール様!お待ちください!そんな……っ、そんな勝手は許されません!」
「アドリーヌ。君は自分の立場をわかってないね?」

縛られたまま駆け寄ってきたアドリーヌが、ユベールの行く手を塞いでユベールは苛立つ。サラはアドリーヌに睨まれて身体を震わせていて。ユベールはサラを抱きしめた。

「アンナ様の言う通りだわ!貴方はこの娘に騙されているのよ!ジュスト様を殺めれば、貴方が王になるのだと、そう思って私はっ!私は貴方のために、私こそ貴方の隣にふさわし――」
「殺されたいの?」

この期に及んで、ロランに加担したのはユベールのためだと言う。そしてユベールの声が低くなったことにも気づかないのか、サラの怯えた様子に優越感を見せ始めるバカな女はペラペラと喋り続けた。

「なぜ、そんなことをおっしゃるのですか?貴方は私を愛してくださっていたではありませんか!あんなに熱くて濃厚な夜を――」
「クロヴィス!」

その戯れ言は、ついにユベールの苛立ちに火をつけた。

ユベールがサラの身体を飛ばし、クロヴィスがそれを受け止める。ユベールは呪文を小さく唱えた。
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