ふたり輝くとき
「ねぇ、サラ。正直に言うとね、本当は殺してやりたいって思った。でも……そしたらサラは泣くでしょ?だからやめた。君がアドリーヌのために泣くのはムカつくし」

真剣な声色になったユベールに、サラはゆっくりとユベールに視線を合わせてくれた。

「僕の影が消えることはないよ。人間そんな簡単に変われるものでもないし。でもね、そういうとき……僕が影に飲まれそうになったときは、君が照らして欲しい。僕の影を、消して欲しい」

ユベールはサラの頬にチュッとキスを落とした。

「でも……私、は…………」

長いまつげを伏せて、サラが微かに言葉を紡ぐ。

「君は綺麗なままだって、言ったでしょ?それに、君が影を背負ってしまったというのなら……それは僕のせいだよ。その影は僕が照らしてあげる。僕が消してあげるから」

ユベールはそっとサラの顎を持ち上げた。2人の視線が絡まって、光に導かれるように唇を寄せた。

それが離れれば、どちらからともなく微笑んで。

「行こっか?」
「はい」

サラは輝く笑顔で小さな手をユベールに重ねてくれた。

ゆっくりと歩き出す、今が最初の1ページ。ふたり輝ける場所を、探しに行く物語の――…


*END*
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