ふたり輝くとき
ユベールはサラが用意してくれた朝食に手を伸ばしながら、じっとクロヴィスを見る。クロヴィスはその視線に気づいているはずなのに、特に表情を変えることもなく黙々とユベールと同じメニューを口に運んでいる。

「貴方はもう王子ではない」
「はぁ……?」

紅茶を一口飲んで、クロヴィスは唐突に話し始めた。

「私はもう貴方に仕える立場ではありませんから、同じテーブルで食事をしても問題ありません」

そしてまた、食事を続けていくクロヴィスにユベールはため息を漏らした。

「別に気にしてないけど――」
「わぁ……!クロヴィスさん、本当に全部持ってきてくださったんですね」

その声で、ようやくサラが部屋の隅で何個か箱を開けていたことに気づく。

「あ、ユベール様!見てください。これ、私のお気に入りだったドレスです」

とても嬉しそうに笑ってドレスを当ててみせるサラ。繊細な刺繍が施されたオフホワイトのカクテルドレス。派手なデザインが多いルミエールのドレスの中では珍しいものだ。

ユベールはムッとして立ち上がり、サラのもとへと近づいた。

「ユベール様?」

ユベールの機嫌を損ねた理由がわからないらしいサラは戸惑いに瞳を揺らす。ユベールは彼女の手からドレスをひったくるように奪って、他のドレスも入った箱に戻した。それをクロヴィスの足元へと置く。

「クロヴィス、これは持って帰って」
「ユベール様!どうしてですか?これは――」
「サラ!洋服はたくさんあるでしょ。それに、こんなドレスを着る機会なんてもうお姫様じゃない君にはないの!」

服はこの家に着てから2人で買い物へ行って揃えたのだ。思わず大きな声を出すと、サラが涙目になった。
< 219 / 273 >

この作品をシェア

pagetop