ふたり輝くとき
「違います!私が言っているのは――っ」
「できる、と言っている。ルミエール最強と言われるユベール王子と渡り合えるのは、もはやお前だけだ」

(私が、ユベール様を?)

ジャンは一体何の話をしているのだろう。何を、求めているのだろう。

サラも、自分の力が普通より強いことは理解している。学校でもいつも成績はトップだった。けれどそんなもの――小さな箱の中での1番――は、このルミエール王国という大きな世界に通用しない。

「もう1度言う。俺がお前に力を使えと言った意味がわかるか?」

サラはギュッと汗ばんだ手を握り締めた。先ほどのトキメキが、恐怖に変わっていく。心臓が音を立てて存在を主張して。

「どうして……」
「お前に理由は必要ないと言ったはずだ。何度も言わせるな。俺に言われた通りにすればいい。わかったな?」

サラは部屋の扉が閉まるのを、動けないままに聞いていた。

政略結婚。

わかっていた。わかっていたはずなのに、その裏にはサラが思っている以上の思惑が隠されている。何もわからないまま、自分は祖父母から引き離され、この城に放り込まれてしまった。

そして何も知らないまま……それぞれの影が、動き出す。

サラの光に照らされて――
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