ふたり輝くとき
「そういうことじゃなくて……」

いくら何でも1日中寝て過ごすわけにはいかないだろう。確かに、ユベールもサラも仕事はしていない。何日かに1度、少し距離のある町まで食材などを買いに行くくらいで特に出かける予定があるわけでもないのだけれど。

「そういうことなの。もう!サラはここに来てから僕の言うことちっとも聞いてくれない!」

ユベールはサラの首筋にチュッと音を立てて口付けた。

「ん、ユベール様……やだ……」

昨夜もまた新しい華がいくつも咲いたばかりなのに……

「だーめ。嫌じゃないでしょ……?」

サラがユベールの胸を押し返すと、ユベールはその手を取って手首にキスをする。そこにも、赤い華を咲かせたユベールは、その痕をじっと見つめた。

「……忘れてた」
「ユベール様?」

突然の言葉に、サラは首を傾げた。一体、何を忘れていたというのだろう?

「ねぇ、サラ。買い物に行こう」

ユベールはニッコリ笑うと、お湯が沸いたばかりのポットの火を止めてサラの手を引いていく。

「え、ちょ、ちょっと待ってください!買い物は昨日行ったばかりで……」

数日分の食料もあるし、特に買い足さなくてはいけない日用品もない。

「サラを捕まえておくもの、買うの忘れてたの!」
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