ふたり輝くとき
「サーラ!サラってば!」

店を出てからちょっぴり不機嫌なサラに、ユベールが呼びかける。

「もう、知りません」

ぷいっと顔を背けると、ユベールは「もう」といってサラを抱きしめた。

「拗ねないでよ」
「拗ねてません。怒っているんです」

サラはユベールの腕の中で身体を捩らせる。だが、ユベールは離してくれる気はないらしい。

「同じでしょー」
「違います」

ムッとして言うと、ユベールはクスクス笑ってサラの髪を指に絡めた。

「お金のことなら心配ないっていつも言ってるでしょ?確かに王子はやめたけど、一応僕も貯金ってものをしてたんだし、十分暮らしていけるよ」

ユベールは第一王子として公務などを行っていたときの給料――源は国民の納めた税金だけれど――をほとんど使わずにいたようだった。

主要4カ国――ヴィエント王国、マーレ王国、ルミエール王国、フラメ王国――は共通通貨を使用しており、貯金は十分過ぎるほどの金額がある。それに、マーレはルミエールよりも物価が安いため生活は楽だ。
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