ふたり輝くとき
第二章:光の裏側

損か得か

ユベールはベッドの上で仰向けになり、天井の1点を見つめていた。

面倒な結婚式がやっと終わり、先ほどシャワーを浴びてスッキリしたところだ。サラも、もう少ししたら湯浴みを終えて初夜のためにユベールの部屋へと連れてこられるのだろう。

(そろそろいいかなぁ……)

サラは文字通りの箱入り娘だ。何も知らない。この城に渦巻く陰謀の数々も、男という生き物も、何もかも知らなさ過ぎる。

ユベールの周りにいないタイプだから少しは楽しめたけれど、優しく振舞うのも飽きてきた。ちゃんと、“プロローグ”とやらは演じてやった。そろそろ本編に入ってもいいだろう。

(ジャンもサラに会いに来たみたいだし)

サラは嘘がつけない。純粋すぎるのだ。

アドリーヌのことを気にしていたことも隠せていなかったし、その後ダンス用の衣装に着替えて部屋を出てきたサラの様子は明らかにおかしかった。ユベールと目を合わせようとはしなかったし、隠せないほどに身体を震わせていた。

ジャンがサラに接触したのだとすぐにわかった。ジャンがサラをユベールに嫁がせた理由も、ユベールがそれを承諾した理由も、同じようなもの。

ジャンは……自分の娘が“暗殺者”に向いていないことに気づいているだろうか。

「配役ミスだよねぇ」

ユベールは思わず呟く。答えは否。それを知っていたら、この結婚の話は存在すらしなかっただろう。

(いや……)

もしかしたらダミアンがサラをこの城に入れるための“理由”として使ったかもしれない。まさにジャンはそれを利用したのだろうから。

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