ふたり輝くとき
リビングのソファに座ってサラを抱き寄せると、サラは少し身体を捩った。

「ダーメ。今日は、僕がサラを独り占めするって言ったでしょ?」

ギュッと抱き締めて逃がさない意思を示すと、サラは抵抗をやめてユベールの背中に腕を回す。

「サラ……いい匂い、する」
「ユベール様がいっぱいバラを買うからですよ?」

少しばかり拗ねた声にユベールは笑って、サラと額をくっつけた。

バレンタインのプレゼントに真っ赤なバラをたくさん買ったのはいいが、大量のバラを隠すところがこの小さな家にあるわけもなく……夜を待たずしてサラにプレゼントすることになってしまったのだ。

サラはそのバラを少しお風呂に入れてちょっと贅沢なバスタイムを過ごしてきたばかり。

「だって、今日はバレンタインなんだよ?去年はあのバカな人たちのせいでサラと過ごせなくて、今年は……」

ユベールはそこまで言って、視線を落とした。

これでは、マノンとディオンを責めているように聞こえる。違う、のに……

サラと2人きりの時間は減ってしまったけれど、2人が生まれて本当に嬉しいのに。

「なんだか、ユベール様まで子供になってしまったみたいです」

ふふっとサラが笑って、ユベールの頭をそっと引き寄せてくれた。柔らかなサラの身体とバラの香りだけじゃない彼女の甘い香りがユベールを落ち着かせてくれる。

「この匂いが、安心するのかな……」

それに、サラの心臓の音もまるで子守唄のように温かくて。マノンもディオンも、サラに抱かれてすぐに大人しく眠りについた理由がわかった気がする。
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