ふたり輝くとき
「マノン、フォーク使わないの?」
「や!」

サラが細かく切ってくれたホットケーキを手で掴んで食べ始めたマノンを見て、ユベールはフォークを差し出してみたが、そっぽを向かれてしまう。

一方のディオンは持ち方こそ“握っている”だけではあるが、きちんとフォークを使って食べている。

「ふーん。そんなベトベトの手じゃ、僕、君のことは抱っこしないからね」

ユベールがそう言うと、マノンはぷーっと頬を膨らませてユベールと同じ琥珀色の瞳をうるうるさせた。

「ユベール様、あんまりイジワルしないでください」

サラが苦笑いで立ち上がり、向かいに座るマノンの手を拭いて綺麗にした。それからサラがフォークを差し出すと、マノンは顔を顰めたけれど、それを掴んで使い始めた。

「イジワルじゃないよ。マノン、ちゃんとフォーク使って偉いね」
「うん」

ユベールが褒めればマノンはコクリと頷いてホットケーキを頬張った。

まだ2歳なのだから、と甘やかすこともできるけれど……マノンは両親の言うことも、本当はどうするべきかもきちんと理解している。その証拠に今もフォークを使い始めているわけで。

「ディオン、君もね。でも、大きくなりたいならミルクもちゃんと飲みなよね」

小さな水色のカップの存在をひたすら無視し続けているディオンにそう言うと、ディオンはまたじっとユベールを見つめて……マノンと同じように顔を顰めてからカップを両手で持ち上げた。

「ふふっ、いい子だね。2人とも」

サラはそう言って向かいに座る2人に微笑んだ。
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