ふたり輝くとき
柔らかな唇が重なって、離れる。

「サラ……」

名前を呼ばれて、サラは目を開けた。

「ねぇ、今ってチャンスじゃないの?」
「え……?」

何を言われたのかわからずサラが困惑していると、ユベールがクスクスと笑い出した。彼はいつもそうやって笑う。でも……何かが違う。

「ユ、ベール様……?」
「ねぇ、サラ。君は本当に何も知らないんだね……」

ユベールの声のトーンが変わって、サラは息を呑む。

怖い――

「ふふっ、やっぱり怖くなっちゃった?」

心を見透かすようなユベールの視線に、サラはビクッと身体を震わせた。

ユベールは大きな瞳をスッと細めて、サラから身体を離してベッドに座った。同時にサラの身体も起こしてくれるけれど、そこには先ほどまでの優しさがない。

「それに、嘘がつけない」

どうしてなのだろう。ユベールはずっと笑顔なのに……

笑って、いない。

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