ふたり輝くとき
「ジャンに、僕を殺せって言われたんでしょ?」
「――っ!」

ユベールの指摘に、サラはパッと視線を逸らしてしまった。

「ほらね、嘘がつけない」

震える手を、胸元でギュッと握る。

「別にいいよ。最初から知ってた。僕が君との結婚を決めたのも、ジャンと同じ理由だし」
「同じ……?」

サラと結婚した理由が……?

「そ。ジャンは僕を殺したい。でもね、僕は君に殺し屋は似合わないと思うんだよね。僕はもっと重要な役として君を使いたい」

ユベールはまたクスクスと声を出して笑った。

「君が祖父母に育てられたって聞いて、どういう風に成長したかくらい予想がついてた。実際に会ってみて、確信したから婚約した。使えないと思ったら婚約なんてしない」

使える、使えない……ユベールは、何の話をしているのだろう?

「君には他にやってもらいたいことがある。僕のお人形になった君に、ね」

わかりたくない。認めたくない。

ユベールはサラを駒として使うために妻にした。ジャンが、娘を武器としてこの城へ送り込んだように。

……政略結婚の意味は知らなくてもやっていけると思っていた自分。なんて愚かなのだろう。
< 29 / 273 >

この作品をシェア

pagetop