ふたり輝くとき
「ねぇ、光のお城はさ……」

ユベールがサラの顎をクッと持ち上げる。

「輝いてるのは外側だけなんだよ?内側は、君には想像もできないくらい真っ暗な闇だ。醜い人間の欲で満ちてる。君も、この1週間で少しはわかったでしょ?」

ユベールの冷たい瞳。そこには、何の感情も映っていない。サラとは違って、彼はすべてをその瞳の奥に隠すことができるのだと……気づく。

サラはできるだけゆっくり呼吸をするように努めた。そうしないと、涙が溢れてしまいそうになる。

泣いてはいけない。この結婚に愛がないことは、最初からわかっていた。ただそれが、サラの想像以上だっただけだ。

優しさや義務さえも、ユベールには最初からなかっただけのこと。サラを逃がさないための、演技だったということ。

プレゼントのブレスレットも、公園で食べたクレープも、苺味のファーストキスも……全部、夢だった。

「どう?僕に裏切られた感想は?」

裏切られた……

それは、サラに優しくしていたことが嘘だから、そう言っているのだろうか。

サラは精一杯微笑んだ。

「裏切られたなんて、思っていません。貴方が私を想っていないことくらい、私だって最初からわかっていました。だから――っ」

サラの言葉は途中で遮られた。グッと腕を引かれて、唇が重なる。先ほどと同じ、触れるだけだったけれど……やっぱり優しさがなくなっていた。

「何それ。つまらないな」

喋ると唇が触れる距離で、ユベールが呟く。
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