ふたり輝くとき
「つまらないから、もうひとつ教えてあげる」

ユベールはスッと立ち上がって、部屋の棚からワインのボトルを取り出した。それをグラスに注いで、一気に煽る。

そして、テーブルにグラスを置いてから棚に寄りかかってサラに笑いかけた。

「ジャンはルミエール正妃、イザベルとつながってる。奴らはイザベルの息子、ロランっていう王子を国王にしたいのさ」

サラは息を呑んだ。権力争い――急に近くなったその出来事に、サラはうまく頭が回らない。

「僕は側室の子でしょ?本来ならそいつが第一王子で、僕が国王になるなんてことにはならない」

ユベールの母親は側室であるが、現国王ダミアンの寵愛を独占していることは国内はもちろん、国外でも有名な話である。

そのお気に入りの側室の息子であり、王家の血を濃く引き継ぎ、強い力を持っているユベール。ダミアンはユベールに第一王子の立場を与えた。

本来ならその座につくのは正妃の子であるロランだ。けれど、ダミアン現国王の後ろ盾がある時点で、ロランが不利なように思える。

だからサラにユベールを殺させたい、存在そのものを消してしまえばいい、ということなのだろうか。

「それだけじゃない。僕を推しているのは母上で、父上にしてみれば僕は2番手。父上が本当に国王の座を継がせたいと思ってるやつは他にいる。ジュストっていう、寝たきりの王子だ」

聞いたことのない名前。王子が、もう1人……?

「ジュストはね、生まれる直前に母親が自殺したんだ。よっぽど生みたくなかったんだね?まぁ、結局ジュストは一応生きてるけど、眠ったままなんだって。原因はよくわかってない」

“生みたくなかった”と言ったとき、ユベールはじっとサラを見つめた気がした。

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