ふたり輝くとき
ガシャン、と。

テーブルに置いたワインボトルが割れて絨毯に染みを作っていく。

「ムカつく……」

どうして、サラは泣かなかった?どうして、無理矢理に笑っていた?

『おやすみなさい、ユベール様』

そう言って、ぎこちない笑顔をユベールに向けたサラ。自分が父親にも、ユベールにも、利用されていると知ってもなお、笑おうとする。

なぜ……

「ユベール様、失礼致します。もう夜も遅い時間です。あまり癇癪を起こさないでいただけますか?」

クロヴィスが部屋に入ってきて、粉々のワインボトルと絨毯の染みを見てため息をつく。どうせ、部屋の外で控えていたのだ。サラが部屋を出て行くのも、ユベールがこうしてイラつくのも、おそらく彼の予想通り。

たまに、ユベールがシナリオを書いているはずの城での“人形劇”を実はクロヴィスが書いているのではないかと錯覚するほどだ。

「クロヴィス、君って本当にムカつくね」
「もう少し、王子らしい言葉遣いをなさってはいかがですか?」

クロヴィスとは一生かかってもまともな会話ができないと思う。クロヴィスは淡々と呪文を唱えてガラスの破片を片付け始めた。

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