ふたり輝くとき
「ク、クロヴィス様!いえ、あの、今日のドレスのデザインがサラ様のお気に召さなかったようで、仕方なく……ねぇ?」
「え、ええ。そうですわ」

侍女たちが掃除の手を止めて口々に言う。

「そうですか。サラ様、ドレスなら他にもたくさんございます。参りましょう」
「え……あ、でも……」

サラが困惑していると、クロヴィスはそっとその背中を押して促してくれた。

「あぁ、貴方たちはたった今から兵舎の担当になりましたので、そちらのお仕事に向かってくださいね。荷物も後で届けさせますのでご心配なく」

クロヴィスが振り返ってそう言うと、2人の顔がサッと青ざめた。

「ま、待ってください!クロヴィス様、それは――っ」
「何か?」

口答えを許さないというそのトーンに、2人がグッと押し黙る。

兵舎の担当は、そんなに大変な仕事なのだろうか。

「あの、クロヴィスさん……」
「サラ様がお心を痛める必要はございません。これは、この者たちの失態です。さぁ、参りましょう」

クロヴィスはサラにもそれ以上の言葉を紡がせてはくれなかった。


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