ふたり輝くとき
「表向き、と言ってもこの城の中での話ですが、権力争いはユベール様とロラン様――つまり、側室アンナ様と正妃イザベル様の対立でございます」

対外的にはユベールが第一王子で事が収まっているように思われている。臣下たちもユベールの持つ力の強さを知っているからだ。

だが、本来第一王子であるはずのロランとその母親であるイザベルがそれを黙って見ているだけなわけがない。そして……

「ジュスト様のことは極秘事項として扱われておりますので貴女もご存じなかったでしょうが、ダミアン様の後宮では有名な話です」

ジュストは“本当の”お気に入りであった女の子供なのだ。

それに、自分の子供を王に据えようと躍起になっているアンナやイザベルに権力を奪われないためにも、母親が亡くなっているジュストを国王にするのが一番良い。

目覚めたとしても、肉体的な成長以外が止まったままのジュストを傀儡として、自分が裏で政治を動かせばいいのだから。

「あの、でも……ダミアン様はアンナ様やユベール様のことをとても愛していらっしゃるとお聞きしました」

クロヴィスはじっとサラを見つめた。

サラにはユベールやクロヴィスの話が本の中の出来事のように思えるのかもしれない。

そうだとしたら、危険なんて言葉では済まされない。この城で生活するのに、こんなに無防備では小さなうさぎはすぐに狼に食べられてしまうだろう。

クロヴィスは心の中で舌打ちをした。彼女を守るのは思っていたよりも大変そうだ。
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