ふたり輝くとき
「わかって、います。私は……貴女の隣にいたらいいですか?ユベール様は私のこと、目の届く範囲に置いておきたいのですよね?」

サラは顔を上げてユベールを見た。手が震えるのは、爪が食い込むくらい握って誤魔化した。できるだけゆっくり喋って冷静さを保てるように努めて。

興奮してはいけない。涙が零れてしまう。使いたくない武器を……使ってしまうから。

けれど、ユベールはサラを先ほどよりも冷たい瞳で見つめる。

「ホントにつまらない。サラ、今の僕の気持ちがわかる?すごく残念。君はもう少し楽しませてくれると思ったのに」

昨夜から、ユベールはつまらないとサラに言う。

ならば、どうしたら楽しくなるというのか。取り乱して怒ったらいいのか、今すぐ駆け出して城から逃げ出そうとすればいいのか?

「ユベール様」
「うるさいって言ってるんだよ、クロヴィス」

ユベールがテーブルを思いきり叩いて、皿たちが音を立てる。

「もういい。僕は出かける。クロヴィス、お前も来い」
「……かしこまりました」

立ち上がったユベールの後を、ため息をついてクロヴィスがついていく。

サラは何も言えないまま、しばらくそこに座っていた。
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