ふたり輝くとき
部屋に戻るとユベールがソファに座っていた。戻ってきたサラを見て、ニッコリ笑う。

「やぁ、サラ。今日は何味だったの?」

あの日から、毎日のようにユベールはサラの部屋に来る。それも決まってサラが侍女からの嫌がらせを受けた後だ。

(どうして……)

なぜ、ユベールはサラの傷をえぐるようなことをするのだろう。助けてくれなくてもいい、ただそっとしておいてくれればいいではないか。

じわりと目頭が熱くなる。

(泣いちゃダメ)

サラはパッとユベールに背を向けて部屋を出ようとした。このままここにいたら、きっと泣いてしまうし、息も詰まってしまいそうだ。

しかし、サラの目の前で扉が閉まった。構わずノブに手を掛けるけれど、回らない。

そんなことをしているうちに、後ろからユベールの手が扉に置かれてサラは逃げ場がなくなってしまった。

「サラ、こっちを向きなよ。僕の方を」

サラは首を横に振った。今、ユベールの顔を見たらきっと泣いてしまう。それは、彼に助けを求めるようなものだ。

「サラ」
「いや……です」
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