ふたり輝くとき
サラがユベールに対して否定的な言葉を口にしたのは初めてで、ユベールは自分の中に湧き上がったよくわからない感情を持て余す。

「サラ、君は僕から逃げられないって言ったはずだよ?それに、このブレスレットをつけたままってことは、君も僕から逃げる意思はないって思っていいよね?」

ユベールはグッと腕を掴んでサラの身体を反転させた。少し乱暴に、その背中を扉に押し付ける。

サラは潤んだ瞳でユベールを見上げていて、唇をギュッと噛み締めていた。

(もう少し……)

何が、だろう。

よくわからないのだ。でも、何かがもう少しで満たされる。

「ねぇ、サラ。君は僕の妻になったんでしょ?もっと僕を楽しませてよ」
「どうやって、ですか?」

サラが震える唇で言葉を紡ぐ。

「それを僕に聞くわけ?」

そんなものは、サラが考えればいい。

いや……自分は彼女に一体何を求めているのだろうか?

(つまらないな……)

どうしてサラはユベールの思うように動いてくれないのだろうか。

楽しませてくれればそれでいいのに。たった、それだけなのに。

今まで、誰もがユベールの思い通りに動いてきた。母親も父親も、貴族たちや国民すべてがユベールの輝きに騙される。1人だけ、ムカつく側近とやらがいるけれど。

それが、サラはなぜかユベールの思い描く“形”にハマらない。
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