ふたり輝くとき

もう1人の王子様

サラは中庭の隅でうずくまっていた。

手入れの行き届いた目の前の花壇に咲く綺麗な花たちに視線を向ける余裕もないし、冷たく吹きつける風さえ気にならない。

胃が、痛い。

あんなにダメだと思っていたのに、やってしまった。それもユベールの目の前で。

サラだって自分の力が普通でないことくらいは知っている。学校に通っていたとき、周りとは明らかに違う質だということにすぐに気づいた。自分が変な力を使えるということがとても怖かった。

そして、ある日ジャンが連れてきた“家庭教師”とやらが言ったのだ。

『この力は神様がお与えになったものですよ』

そう言ったあの教師は、訳のわからない力を使える自分よりも恐ろしく感じた。彼のおかげでその力を多少コントロールできるようになったのは事実だけれど。

(お祖母様、お祖父様っ!)

どうして自分は2人から引き離されてしまったのだろう。こんな怖いお城になど来たくなかった。優しくて、守られた家の方がよっぽど輝いていた。

サラはペンダントを握ってギュッと目を閉じた。

< 51 / 273 >

この作品をシェア

pagetop