ふたり輝くとき
「それで?君はやっぱりロランのお姫様になりたいの?」
「そんなこと――っ」

ガン、とユベールはサラの顔の横に拳を叩きつけた。サラは恐怖で声が出ないようだ。

(ムカつく)

イライラする。

「じゃあ、これは何なの?」

サラの手からロランの上着を奪って目の前に突きつけてから床に投げ捨てた。そこに光を集めて跡形もなく燃やす。

焦げた匂いが部屋に広まって、サラについていたロランの匂いもかき消されていく。

そうしたら、少しだけスカッとした。

「抱きしめられて、嬉しかったの?僕が初夜の続きをしようって言ったときはあんなに怒ってたのに?」
「違――っ」
「何が違うの!?」

大声を上げると、サラはビクッとして黙った。

なぜ、言い返してこない?本当のことだから?ロランの方がユベールよりも“王子様”だったと、そういうことなのか。

「サラ。君は僕のお姫様になったんだよ?そこに愛がなくても、その肩書きは変わらない」

“愛がない”と、その言葉でサラの瞳にみるみるうちに涙が溜まっていった。

もう少しだ。もう少しで、それが溢れるのだ。
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