ふたり輝くとき
シャワーの後、侍女たちが用意してくれた朝食を食べてホッと息をつく。と言っても、ほとんどを残してしまったのだけれど。

息の詰まる城の中、けれど、またロランに会ってしまうのではないかと思うと中庭へ行くことは憚られた。

「サラ、いらっしゃる?」

ふいに、ノックの音と共に扉が少し開いて声を掛けられた。

「あ、はい」

サラが返事をすると扉が開き、キラキラと光るドレスにこれでもかというほどの装飾品をつけた女性――ユベールの母親、アンナがサラに笑顔を向けていた。手には小さな箱を持っている。

「アンナ様、こんにちは」

サラは立ち上がって丁寧に頭を下げた。

「ごきげんよう。今、少しお時間いいかしら?」
「あ、はい」

アンナは優雅な仕草でソファに近づいて腰を下ろし、サラにも向かい側に座るよう促した。そしてサラが座ったところで、口を開く。

「ユベールとはうまくやっているかしら?」
「え……」

ドキッとして、サラは言葉を失ってしまった。すると、アンナの目がスッと細められる。

「私の言っている意味がわからなくて?体の相性がいいかどうかを聞いているのよ」

サラは体温が急激に下がっていくような感覚に襲われた。

嫌な予感しかしない。

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