ふたり輝くとき
「私ねぇ、早く孫が欲しいの。ユベールと貴女の子供」
「は、い……」

サラはなんとか喉の奥から声を出す。

「貴女がジャンの娘って聞いて最初は反対だったの。ジャンはロラン派でしょう?でも、貴女も……優秀な遺伝子を持っているって知って許したのよ」

背中を熱いような、冷たいような、よくわからない嫌な汗が伝っていった。もし、サラの思っている通りだとするならば……

「ユベールが素晴らしい力に恵まれた子だということは知っているでしょう?私も鼻が高くて」

アンナは片手を口に当てて笑った。

「そんなユベールと貴女の遺伝子を受け継いだら……とっても優秀な子が生まれるわ。優秀な跡継ぎに恵まれれば、国王の座は確定するでしょう。ジュストみたいな寝たきりの王子など目じゃないわよ」

また痛み出した胃を、サラは両手で押さえた。吐き気がする。

ユベールとサラの子が欲しい。権力を手にするために――この人も、サラを道具として見ている。まだ存在すらしないユベールとサラの子も彼女にとっては同じ。

「まぁ、今からでは王位継承の儀までに産むことはできないけれど、少なくとも貴女が身ごもっていれば誰もが認めるわ」

サラは震える右手で胸元を探り、ペンダントに触れた。ギュッと握ると少しだけ楽になる。けれど、アンナのお喋りは止まらない。
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