ふたり輝くとき
「ダミアン様は……必ず貴女に手を出すわ。意味はわかりますね?」

サラは呆然とアンナを見つめることしかできない。

意味がわからなかったわけではない。ただ、「はい、わかりました」と簡単に処理できる用件ではないし、サラにとってそれは理解のできないことだ。

アンナは、サラに「ダミアンに抱かれろ」と言っている。

「ただ、貴女がダミアン様の子を身ごもっては困るわ。ジュストに加えて、お気に入りがもう1人できるようなものだもの。だから、このお薬を使いなさい。絶対忘れてはいけませんよ」

つまり、アンナの持ってきた箱には権力を握るための“道具”を作るのに必要な“道具”が入っている。

青い薬は、きっと避妊薬。その他は、媚薬。

ダミアンの子を身ごもらないための薬と、ユベールとの子を作るための薬。

「1番大切なのは、ジュストの居場所を聞き出すことです。ダミアン様が1番ご機嫌になられるときに、“会いたい”と頼みなさい。貴女にならきっと……」

アンナはフッと笑った。その笑みは、とても恐ろしいものでサラの指先が一気に冷たくなる。

「ど、どうして、ですか?」
「あら……」

サラの問いに、アンナは拍子抜けした顔をした。けれどすぐに納得したように頷いてニッコリと笑う。
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