ふたり輝くとき
「ジュストは隠されているの。ダミアン様がお気に入りの女に産ませた王子なのだけれど、眠ったままでしょう?」

何もできないジュストを守るため、ダミアンは彼の身体を城のどこかに隠しているのだという。定期的にクラドールに診察をさせているらしいけれど、誰もそのクラドールが戻ってきたところを見たことがない。

「きっと、口封じに殺しちゃっているのね」

アンナがため息をつきながら言った恐ろしい言葉にサラは身震いする。なぜ、ここの人たちはこんなにも簡単に人を殺める話をするのだろう。

「ダミアン様はお人形のような女性に弱いのよ。私のことも最初はとても気に入ってくださっていたけれど、今はただ激しいお遊びが楽しいだけみたい」

アンナはサラの頬を撫でていた手を首筋に滑らせた。ビクッと身体が跳ねて、アンナは満足した表情になる。

「いい子ね、サラ。絶対にジュストの居場所を突き止めるのよ?これはジャンも知りたがっていることだから、貴女に損はないわ」

ダミアンはお気に入りのアンナにさえも、ジュストの居場所を教えない。だからサラに話を持ちかけてきた。

だが、ダミアンがサラを気に入る理由も、アンナがサラにならダミアンがジュストを会わせると思っている理由も、サラにはサッパリわからない。

わかるのは、アンナとジャンがジュストの居場所を知りたい理由が彼を殺めるためなのだということだけ。

「よろしいわね?ジュストさえ消せば、ユベールの国王の地位は確立します。貴女も今はユベールの妻なのだから、正妃という立場は欲しい地位でしょう?」

サラは口を開いて、けれど出てきたのは乾いた息だけだった。言葉は喉に張り付いて出てこない。
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