ふたり輝くとき
――思わず中庭へとやってきてしまったけれど、サラはすぐにそれを後悔した。

つい先ほどまで、中庭には行かないようにしようと思っていたことすら忘れてしまった自分はなんてバカなのだろう。

「サラ!」

城から中庭へと出てきたサラを見つけたロランが笑顔で近づいてくる。

「ロラン、様……」
「良かった、会えて。君を待っていたんだ」

サラは伸ばされた手を避けて後ろへと下がった。それを見たロランが手を引っ込める。

「ごめん。君を困らせるつもりはないんだ」

少し困ったように笑ったロランは噴水の近くにあるベンチを指差した。

「少し、話そう?」
「いえ……私、戻ります」

サラはロランに背を向けて歩き出した。けれど、腕を掴まれて引き止められる。

「待って。部屋に、戻るの?アンナ様から逃げてきたんじゃないの?」

ロランの指摘に、サラは思わず振り返ってしまった。すると、ロランはクスッと笑う。

「アンナ様の香水の匂いがしたから聞いてみたんだけど……その通りだったみたいだね?やっぱり君は嘘がつけない子だ」

サラはそのまま手を引かれてベンチに座らされた。

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