ふたり輝くとき
「ユベールとの子供を急かされたってところかな?」
「――っ」

予想通りの反応。ロランは優しくサラの頭を撫でた。

「俺は、アンナ様のそういうところがあまり好きじゃない。子供は、愛する2人の宝物だろう?無理矢理作るものでもないし、道具として使うなんてもっと許せない」

サラがおずおずと顔を上げた。ロランを警戒する気持ちと“王子様”を信じる気持ちの間で揺れているのがよくわかる。

ジャンのせいでロランの印象が良くないらしいのは理解している。だが、ファーストコンタクトから“王子様”として振舞っている――サラが自分の目で見る――ロランを疑わないだろうということも心得ている。

「直接会って話すのは2回目だし、正直まだ好きっていう気持ちとは違うけど……でも、君のこと、もっと知りたいと思っているよ。だから、もっと会いたい。ダメ?」

サラの肩を引き寄せて細い身体を腕に閉じ込めると、サラは身を捩った。

「ロラン様、お離しください」
「サラ、キスもそれ以上も、ちゃんと好きな人と――っ」

言いかけた言葉を止めて、ロランは呪文を唱えた。背中に作った光のベールが音を立てて割れる。

(へぇ……意外だな)

ロランは息を吐いて立ち上がり、振り返った。

少し頭がクラクラするのは防御がかなりの力で破られたからだろう。それでも、この義母弟は手加減している方だ。

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