ふたり輝くとき
「ユベール、危ないだろう。サラもいるのに」

ニッコリと笑ったロランに、ユベールは舌打ちをした。この性悪義母兄はやはりサラの前で“王子様気取り”なのだ。

ロランの立っている奥、ベンチには真っ青になったサラが座っている。ユベールは何も言わないまま歩いてロランを通り過ぎ、サラの目の前に立った。

「サラ」
「っ……ユベール様、私――っ」

ユベールから発せられた低い声に、サラがビクッとして身体を小さくする。その細い手首を掴んで無理矢理立ち上がらせ、乱暴に手を引いて城へ戻ろうとするとロランがユベールの腕を掴んだ。

振り返れば、サラの腕も掴んでいてユベールはカッとなった。

「触るな!」

グッとサラを引き寄せて抱きしめた。母親の強い香水の匂いとロランの使う香水の匂いが混じって、やはりサラの甘い香りがかき消されている。

ロランは一瞬驚いた顔をした。そしてユベールの1番嫌いな笑顔を浮かべて見せた。ユベールに抱きしめられたサラに見えていないからと、簡単に仮面を外してみせるロラン。

(ムカつく)

ユベールはロランを思いきり睨みつけてから、サラの手を引いて城へと再び歩き始めた。

その背後から、光の矢が飛んできてユベールの中に声が流れてくる。

『サラは俺がもらう。せいぜい見放されないようにしろよ……“王子様”』

やはりユベールの気に食わない笑い方をするロランの声に、ユベールはサラの手を掴む力を強めた。

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