ふたり輝くとき
「サラ、もっとだ。早くこちらにおいで」

歩みを止めてしまったサラに、ダミアンがまた声を掛ける。けれど、サラは足が竦んで動けなかった。

サラの思っていたような“用件”ではないようだということはなんとなくわかる。だが、まさか本当にアンナのいうようなことが起こるとも信じられない。

(ほ、んとうに……?)

どうしていいかわからなかった。

危険だと本能が告げている。けれど、ダミアンの言葉に逆らうことも危険だと理性がサラの背中を押そうとする。

サラはギュッと胸元で右手首を握った。左手で琥珀色のブレスレットに触れ、その右手でペンダントに触れる。

「サラ」

ダミアンにもう1度名前を呼ばれ、サラは震える足を踏み出した。

(だ、大丈夫……)

サラの思い過ごし――きっと、国王を前にして緊張しているだけだ。怯える必要などない。ダミアンはユベールの父親、今はサラの義父でもあるのだから。

そしてサラがまたソファへと近づいたとき、ダミアンの手が伸びてきてグッと引き寄せられ、ダミアンの隣に座らされた。

腰にダミアンの手が回され、もう片方の手で頬を撫でられてゾッとした。その近すぎる距離に、サラはダミアンの肩を押し返す。

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