ふたり輝くとき
「ダ、ダミアン様っ」
「恥ずかしがるでない。ユベールにはもう何度も抱かれたのだろう?」

頬をなぞっていた手が、サラの首筋を伝う。

「――っ」

恐怖で声が出ない。サラの肌を撫でるその無骨な指の感触が気持ち悪い。

「あぁ……やはりよく似ておる。シュゼットもこんな綺麗な金色の髪をして、青い瞳で私を見ておった」

“シュゼット”

突然ダミアンの口から紡がれた母親の名前に、サラはハッとして顔を上げた。ダミアンは目を細めてサラを――いや、シュゼットを――見ている。

喉がカラカラに渇いて、うまく言葉が出てこない。

サラの母親はサラを産んで間もなく亡くなったはず。彼女は中流階級の貴族の娘だったと聞いている。それなりに裕福ではあったらしいが、ダミアンと面識がもてるような身分ではない。

「な、なぜ……お、母様を……?」

なんとかそれだけ言うことができたけれど、声は掠れて、震えて、自分でもそれが意味を成す音になったかはよくわからなかった。

「シュゼット……なぜ、命を絶ったのだ……」

サラを愛おしそうに抱き寄せて、ダミアンが呟く。

息が止まった。

ダミアンの腕に包まれている言い知れない恐怖と、ダミアンのその言葉に。
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