ふたり輝くとき
パン、という音とともに部屋が光る。その一瞬の隙をついて、サラはダミアンの下から抜け出した。

とにかく逃げなくてはいけない。

サラは全身の血が脈打つのを感じながら床に足をつく。しかし、恐怖で震える足はその場に張り付いたように動かない。

すると、グッと腕を掴まれて後ろに身体が倒れた。ダミアンの胸に倒れこんだと思えばすぐに体勢が入れ替えられて床に押し付けられる。

「なぜ逃げる?これほど名誉なことはあるまい。私の子を産む……私がその子を国王にすると言っておる。お前は権力を手にできる。この城で、この国で一番のだ」
「いやっ」

尚も暴れるサラに、ダミアンはスッと目を細めると「コンタンドレ」と小さく呟いた。その瞬間、サラの手足に光の輪が巻きついて身体がピッタリと床に貼りつく。

「や……」

できる限りの力をこめて手足を動かそうとするけれど、ビクともしない。

拘束の呪文だ。

サラの頭の中からは自分が抵抗できる呪文を使えることさえ抜け落ちていた。いや、それに思い至ったとしても声が出なかっただろう。

< 79 / 273 >

この作品をシェア

pagetop