ふたり輝くとき
第三章:闇の中

過去

「サラ、もう泣き止みなよ」

ユベールはため息をついて、ソファに座らせたサラの涙を乱暴に拭った。

本当にイライラする。

「ご、ごめんなさ……っ」

謝りながら、また新しい涙を次々と零すサラ。ユベールは舌打ちをした。

「ああ、もう!何なの?大体、あんな場所に入ったら何が起こるかくらいわかるでしょ?」
「ご、め……なさ、い」

涙を拭いながら謝り続けるサラにイライラは募るばかりで。

「君は!ロランにも父上にも気をつけろってクロヴィスに言われてたのに、どうして言うことが聞けないの?君は僕のお人形なの、僕の言うことを聞くのが君の役目なの!」

実際は、ロランやダミアンに気をつけろと言ったのはクロヴィスだから「ユベールの言うことを聞く」とは少し違うのだけれど、そんなことは今どうでもいい。

サラは無防備過ぎる。普通、権力争いについて聞かされたら警戒心というものを持つ。特にサラはロラン派の人間としてユベールのもとに送られて、その計画がバレたという微妙な立場にあるのだから尚更だ。

「大体、母上にだって父上が君を気に入るって聞かされたんでしょ!?それなのにのこのこついていったりして!それとも何?父上に抱かれたかったの?それなら今からでもあの部屋に戻してあげるよ!」
「――っ」

怒りに任せてそう言うと、サラがビクッとして身体を震わせた。そしてまたたくさんの雫を瞳から溢れさせていく。先ほどのことを思い出してしまったらしい。

「あぁ、もう!」

ユベールは乱暴にサラを引き寄せた。
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