ふたり輝くとき
「王位継承の儀まではもう3ヶ月もない。ジュストを目覚めさせる方法が見つからなくて父上は焦ってる」

だから、シュゼットに生き写しのサラに子を産ませて跡継ぎとするなどと安易な結論に至ったのだ。

「君のお腹の中に赤ん坊がいれば、とりあえずの時間が稼げるでしょ」

たとえ母親のお腹の中にいたとしても生きていることには変わりない。大臣たちさえ納得させれば継承の儀は後で行える。権力はダミアンに残る。

幼いサラのことは何とでも言いくるめられると思っているのだろう。それはあながち間違ってはいないと思うけれど。

「僕から見ても、君はシュゼットにそっくりだ。それが、父上が君を僕の正室として迎え入れるのを許した理由。母上が君に父上に取り入るように言った理由も同じ」

ユベールはフッと息を吐いた。これだけ言っておけば、サラももう不用意にダミアンに近づいたりしないだろう。

「お父様は、それをご存知で……」
「そうだよ。ジャンは父上が君を欲しがると見越してこの縁談を持ち掛けてきた」

サラがシュゼットによく似た姿へと成長したことは、彼にとって思わぬ幸運だったのかもしれない。

ダミアンは権力にも女にもかなりの執着を見せる。サラをユベールに嫁がせればユベールもダミアンも同時に射程圏内に入ってくるという訳だ。

もちろんそれは、サラが人間を躊躇することなく殺められるという前提がなければ成り立たないけれど。

「ここはさ、そんな大人の欲や憎しみがいーっぱいの“闇のお城”なの」

その争いに巻き込まれたサラは、まだ1人輝きを保っている。それが、いつまで続くのか、いつ闇に堕ちていくのか、楽しみだったのだけれど……

今は――
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