ふたり輝くとき

憧れの王子様

「サラ、おはよう」

次の日の朝、サラが身支度を終えるとちょうどユベールがサラの部屋を訪れた。

「お、おはようございます」

昨日の今日で、まだ慣れないユベールとの会話。それもわかっているかのようにユベールはクスッと笑った。

「少し、一緒に出かけない?」
「え……でも、お仕事があるのではないですか?」

しかし、ユベールはそのままサラに近づいて手をとり、歩き出してしまった。

「あ、あの……っ」
「だーいじょうぶ。婚約者との仲を深めるのも、仕事のうちだと思わない?」

ニッコリと笑って振り返ったユベールは輝いて見えて、サラはドキッとする。これが、本物の王子様なのだ。そして、サラの……王子様。

形だけかもしれない。ジャンはユベールがサラを見初めたようなことを言っていたけれど、おそらくこれは政略結婚といわれるもの。

第一王子であるのにまだ正室を迎えていないユベール。ルミエール軍のトップに君臨する父親を持つサラ。

ジャンが自分の娘を推したのか、他に年頃の娘がいなかったのか、サラにはあまりよくわからないけれど、そうなるのは必然だったのだろう。

それでも――そこに愛がなくても、たとえ義務としてでもユベールはサラを優しく照らしてくれるとその笑顔は思わせてくれる。

そう思ったら、サラはユベールに自然と笑みを返すことができた。

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