ふたり輝くとき
何を、期待していたのだろう。

ジャンが「ユベールを殺す」という目的でサラをこの城に入れた時点で、彼はもうサラの父親としての役割を捨てたのだ。

それまでだってほとんど会いに来てくれることもなく、サラのことを娘だと思ったことさえなかったのかもしれない。

サラの頬に涙が伝う。

ジャンは、サラを道具として使っているのだ。その道具がユベールを殺すこと、ダミアンの欲を満たしてジュストを見つけ出すこと――それが彼にとっての最優先事項。

「何を泣いている!?1度抱かれるくらい何でもないだろう!それよりも、ジュストはどこにいるんだ?」

ジャンがサラの肩を思いきり掴んで身体を揺するのも、どこか現実とは違う世界のような気がした。

「ジャン、そんな乱暴にしないで。ユベールが止めたからサラは父上には抱かれていない。それに、君はユベールを消すことを優先してサラにジュストのことを言っていなかっただろう?」
「この、役立たずが!」

頬に重い衝撃が走ってサラは床に倒れこんだ。身体を起こす気力もない。

「我々のロラン様を王に据えるという目的がわかっているのだから、それくらい察して当然だろう!?あの老いぼれから聞いたのなら尚更だ!お前は母親の無念すら晴らせないのか!?」

ジャンの怒鳴り声が部屋に響く。

ロランがサラに駆け寄って身体を起こしてくれたけれど、サラにはもう自分がどこに居るかさえよくわからなくなっていた。
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