ふたり輝くとき
「ジャン、落ち着いてよ。君だってこんなに早く父上がサラに手を出すとは思っていなかったんだろう?」

ロランは放心状態のサラの身体を支えたまま、ジャンを見上げた。顔を真っ赤にして肩を上下させるジャンはサラを鋭い視線で睨みつけている。

ロランもジャンも、一番やっかいなユベールから始末するという計画で動いていた。その後、罪を問われるサラを牢に入れて、裏でダミアンに差し出すつもりだったのだ。

だが、ダミアンは予想以上に貪欲だったらしい。

側室も数え切れないほど居るし、ユベールの力を恐れている節もあるからと甘く見ていた。ダミアンはユベールがサラを気に入っていることに、あの日初めて気づいたのかもしれない。

加えて、娘にほとんど会うことのなかったジャンはサラが人を殺めることを躊躇するとは思っていなかった。

(ジャンに任せたのは失敗だったな)

そもそも、ジャンとは目的が少し異なるのだ。ジャンはシュゼットを奪ったダミアンを、その忌々しい過去の産物ジュストを消したい。ロランも2人が消えれば楽にはなるが、どちらかといえばユベールが1番邪魔なのだ。

ユベールが消えれば、第一王子の座はロランに戻ってくる。寝たきりのジュストを王に据えようとする大臣はいない。

サラの持つ力を利用することしか考えになかった。だから最初、サラに接触したときにうまく行きそうにないことを悟って“王子様”を演じることにしたのだ。自分に恋をさせて、言うことを聞くように。だが、それも……

「っ、ユベ……さ…………っ、ぅっく……」

先ほどから小さくユベールの名前を繰り返し呟くサラは、完全にユベールに持っていかれてしまった。そして、サラの長い金色の髪から見え隠れする首筋の薄っすらと紅い痕が、ユベールのサラへの独占欲を物語っている。

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