ふたり輝くとき
サラの部屋に戻り、ユベールはサラをベッドに座らせた。

向かい合ってユベールも座ると、サラは流れる涙を拭うこともしないまま泣き続けた。それを、ユベールはじっと見つめていた。

やはりサラは、ユベール以外の者の前では簡単に泣くようだと……それはなぜなのかと思いながら、何も言わずにただ彼女の頬に光る雫の行方を辿って瞳から顎へ視線を動かしていく。

それを、何度繰り返した頃だろう。

「ユベール様」

掠れた声で、サラがユベールを呼んだ。

「何?」
「……私は、必要ですか?」

ユベールは答えなかった。

必要と言われれば、必要だ。けれど、その理由がなぜか思い出せなくて。

「帰り、たい。誰も、私を……“使わない”ところへ帰りたい」

そこで、サラは初めて涙を拭った。

サラが何をしに兵舎へ行ったのかも、ジャンがサラに何を言ったのかも、わかる。サラが欲にまみれた城から逃げ出したいと思うのも理解できる。

「じゃあ――」

ユベールが言いかけたとき、部屋の扉がノックされた。先ほど呼んでおいたクラドールだろう。ユベールはため息をついて返事をした。
< 98 / 273 >

この作品をシェア

pagetop