A spring blue wind
いつもなら、絶対こんな甘い会話はしない。
どうしちゃったんだろう、私も陽も。
何かに酔ってるのかな……。
「キス、していい?」
耳元で、低く、痺れるような声で問いかけられた。
ぞわりと電気が走ったように鳥肌が立った。
訊いておきながら、陽の顔はすでに数センチ先にある。
答える代わりに目をぎゅっと閉じた。
数秒後、陽の大きくて温かい手が私の頬を撫で、唇に柔らかいものが重なった。
息が苦しくなったと思えば、一度離れ、角度を変えてふたたびキスの雨を降らす陽。
キスしてる時の陽ってどんな顔してるのかな?
ふとそんなことを思って、薄く目を開けてみると、私を愛しく見つめるもうひとつの眼と目があった。
ドキッと心臓が高鳴った。
だって、目が合うと、妖艶な笑みを向けてきたから。