いちようらい福
朝のケーキ仕上げの作業が終わると、皆で少し休憩をとる。
皆と同じく、聡太もケーキの切れ端や、昨日の残りをつつきながらコーヒーを飲む。
「昨日は楽しかったか?」
隣に座る石田力哉が問いかけてきた。
「あぁ、おかげさまで。」
と言うのも、聡太と恵美は、力哉の紹介で出会ったのだ。
力哉は27歳で、聡太より年上だが、力哉はまだパティシエとしての仕事は5年目なので、聡太より後輩ということになる。
二人は仲が良い。力哉は冗談を言うのが好きで、常に笑っているような、とにかく楽しい人柄で、大人しい聡太のことをたまに、つまらないと思うことはあるが、二人は妙に話が合う。
「お前らが、初めて合ってから2年ちょい?」と言いながら、力哉はコーヒーを、くいっと飲んだ。
「うん、昨日は付き合って2年目記念だから。」
「結婚しねーの?」と尋ねた力哉の言葉に、聡太は少しドキっとした。だが、落ち着いて「いや、今は特に考えてないかな。」と答えた。
ふと見上げた時計は9時36分を指していた。
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