タコの事情
今夜も、魚は捕まらない。晩美は、肩を落とす。


(借金さえ無ければなあ…。俺だって、店を移りたいよ。)


町の大通りで車を止めて、町の美人ホステス4人が掴み合いの喧嘩をした事件。真ん中に店長を置いて奪い合ったのだ。


(あれで、悪い評判になって、客が寄りつかなくなったからなあ。もっと、上手い事やれよ。全く!)


「あらー、晩美じゃん。晩美ちゃ~ん、久しぶり♪」


背中に、ぶつかって来る若い女の体。甘い香水の匂いに、晩美は嬉しくなる。


「麗奈(れな)さんか?」


「そうよ、麗奈。覚えてくれてたのねー。」


それは、前の店で指命客だった女であった。








すでに、酔っている麗奈だが、状況が分かるらしい。


「何よ、この店。客が、わたしだけじゃない。潰れるわよ!」


「本当の事を言うなよ。貸し切りで、いいじゃねえ?」


「こいつ、嫌い。女たらしの顔してる!」


指差された店長は、怒って席を立つ。その女たらしで、4人の女に貢がせていたのだ。
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