君と、世界の果てで
「ミオ、今日も超可愛かったねー」
「マジ、細いし、白いし!
神様は不公平だよ!」
同じ感想が、違う方向から何回も聞こえた。
ライブハウスの裏口には、パラパラと人が集まっている。
「もう、今度でいいだろ。帰ろうぜ」
そんな俺の提案を、
「えぇっ、久しぶりに陸君に会いたいよ。
いつも逃げられるんだもん」
と、彼女はあっさり拒否。
はあぁ。
心の中でため息をつく。
彼女を連れて来たのは、失敗だった。
何で俺まで、出待ちみたいな事しなきゃならないんだ。
彼女は、紗江(さえ)という。
俺の親父は、自営業。
まぁまぁの建築関係の会社をやっている。
その、取引先の娘だ。
簡単に言えば幼なじみ。
歳が近く、小さな頃から家に遊びに来ていた。
それが何年か前に、紗江から言われて、何となく付き合うようになった。
まぁ、よくある話だ。
とにかく紗江は、俺の家族に好かれようと必死なのだ。
「来たよ!」
声を上げたのは、他の女の子だった。
知らなかったが、追っかけまでいるらしい。