君と、世界の果てで
紗江が、ますます不快感をつのらせていくのがわかる。
「だって、自分で決めた事でしょう?」
「そうだな」
イライラして、煙草に火をつけようとしたが、全席禁煙の貼り紙が見えた。
煙草の箱を押し潰して、胸のポケットにしまう。
禁煙していたはずの俺を、紗江がにらむ。
その視線に、一層イライラした。
「自己中」
追い討ちの一言。
それで、俺の中で何かが切れた。
「そうだな。
嫌なら、もうやめとけ」
「……何?」
「こんなやつと、結婚なんかしたくない、別れるって、親に言えよ」
「……翼……!」
もう無理だ。
自分の中の誰かが言った。
俺の事を理解してもらおうなんて、思わない。
でも、せめて。
陸の代わりを務める事くらい、快く許せないものだろうか。
今はもう、陸が死んだ事も迷惑にしか感じていないのだろう。
それが伝わって来て、悔しい。